コミッショニングレターVol.23 No.3(3月号)
2024/03/12掲載
第20期通常総会について
第20期通常総会・講演会を下記の通り開催することとなりましたので、ご案内申し上げます。
第20期通常総会については、通常総会、講演会 及び 技術交流会を実地開催致します。会員の方々との交流できる良い機会ですので、是非会場にお越し下さい。
総会後の講演会及び技術交流会につきましては、正会員以外の皆様にもご参加いただけます。御多忙中とは存じますが、お誘い合わせの上ご参加ください。遠方のため参加しにくい方等については、WEBでの配信をご希望ください。
なお、正会員の方で、総会を欠席される方、WEB配信を希望される方は、 必ず委任状のご提出をお願い申し上げます。委任状はBSCAホームページよりダウンロードください。
日時 2024年5月21日(火)13時30分 ~
場所 TKP新橋カンファレンスセンター ホール15C(15階)
東京都千代田区内幸町1丁目3-1 幸ビルディング
定員 60名
申込締切 2024年5月13日(月)
主催 建築設備コミッショニング協会
スケジュール
通常総会 13:30~14:30
特別講演会 15:00~16:45
講演会1 15:00~15:45
講演会2 16:00~16:45
*講演者は決まり次第BSCAのHPにてお知らせします。
技術交流会 17:00~19:00 同会場 ホール16D 有料:1名様 6,000円
*但し、賛助会員 各法人1名 を無料とします。
お申込み方法:http://www.bsca.or.jp/event/?p=1845 よりお申込み下さい。
BSCA設立20周年記念シンポジウムin中部 開催報告
2024年1月26日(金)にBSCA設立20周年記念シンポジウムin中部「-ビル用マルチパッケージ型空調の適正な設計とコミッショニング-」が、会場参加とオンライン参加のハイブリッドで開催されました。参加者は講師3名、パネラーと司会者で 5名、現地参加34名、オンライン参加者38名の合計72名でした。
中部大学の山羽基先生よりご挨拶とシンポジウムの主旨説明があり、前半では基調講演が行われました。基調講演では、国総研の宮田様より「令和6年4月より始まる改正建築物省エネ法による規制強化
~非住宅建築物の新基準に適合させるための外皮・設備設計仕様とは~」と題して、令和6年4月から適用される小規模非住宅の省エネ基準適合義務化に至るまでの説明があり、更なる脱炭素化及び省エネ化、ZEB化に向けてのポイントを整理し、今後Cxプロセスが増々高まる事の重要性が説明されました。
令和6年改正省エネ基準が求めている設計として①機器選定においてどの程度の余裕を持たせるべきか、②室の使われ方や在室人員、機器発熱の実態調査が重要、の2つのポイントが提示されました。また、環境エンジニアリングが改めて必要で、省エネと室内環境の両立が必須となり、シミュレーションの本格的活用の重要性も強調されました。まとめとして、従来の経験値が通用しない設計となる事から、性能目標→検証→最適化を目的とするCxの重要性が増々高くなる点が肝要であるとの事でした。
前半の基調講演が終了し、休憩時間を挟み、後半は、個別分散システムのガイドラインに関する2つの講演が行われました。
1つ目は、佐藤エネルギーリサーチ株式会社の佐藤誠様より「個別分散空調システムの課題の設定と解決策の検討」と題して、ガイドラインを作成する上での前段階として①課題整理として実態調査の内容、②解決策の検討として評価モデルの構築と試算を行った、2つのワーキングによる検討内容の説明がありました。前者では設計時の内部発熱の見方の重要性が顕在化し、運転時間の異なる室用途は同一の室外機の接続が好ましくない点が判明しました。後者では、評価モデルでケーススタディを実施した結果、外皮性能向上の重要性が確認できました。
2つ目は、株式会社日建設計の佐藤孝輔様より「個別分散空調システムの適正な計画・設計・運用のポイント」と題し、作成したガイドラインに基づいた説明がありました。
計画段階では、外皮性能向上と外気処理方法の決定の重要性が、設計段階では、熱負荷計算時の留意点として、コンセント負荷、照明発熱、人員密度、外気量、余裕係数の見方について、最後に運用段階として、設定温度、運転時間、外気処理機の運転状況、実稼働データ確認のポイント等について説明がありました。まとめとし、更なる省エネや、カーボンニュートラルの実現には①計画・設計段階の原点に戻り②建築計画・電気設備計画の綿密に調整するとともに③運転実態を把握し適正に制御・運用して行く事の重要性が確認されました。
最後に、シンポジウムの3名の講演者と田中英紀教授(名古屋大学)をパネリストとし、山羽先生の司会により参加者からの質疑応答に続きパネルディスカッションが行われました。
昨今では、個別分散空調システムが非常に多く採用され、ビル用マルチの設計段階で「大は小を兼ねる」との意味合いで過大な能力の機器選定が行われ、非効率な運用がされてきました。ここに来て日本政府が掲げた2050年までに温室効果ガス排出量ゼロとする「カーボンニュートラル」宣言が出され、ビル用マルチを導入した多くの建物での省エネ強化が必須となってきた。機器選定では「大は小を兼ねない」事を念頭に、能力に余裕を持ちすぎた設備からの脱却の重要性が確認されました。
本日、パネルディスカッションの冒頭で、音声機材の接触不良から、一時音声が途切れる不具合があった点について、リモート参加の皆様には、改めまして深くお詫び申し上げます。
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<シンポジウムのスケジュール>(敬称略)
司会:田上 賢一(BSCA理事、新菱冷熱工業)
13:30~13:40 趣旨説明 中部大学 山羽基
13:40~14:50 基調講演 令和6年4月より始まる改正建築物省エネ法による規制強化
~非住宅建築物の新基準に適合させるための外皮・設備設計仕様とは~
国土交通省 国土技術政策総合研究所 主任研究官 宮田 征門
14:40~14:50 休憩
14:50~15:30 講演1 個別分散空調システムの課題の設定と解決策の検討
佐藤エネルギーリサーチ 佐藤誠
15:30~15:50 講演2 個別分散空調システムの適正な計画・設計・運用のポイント
日建設計 佐藤孝輔
15:55~16:40 質疑応答・パネルディスカッション コーディネーター:山羽 基(前出)
パネラー:宮田(前出)、佐藤誠(前出)、佐藤孝輔(前出)、田中英紀(名古屋大学)
BSCA設立20周年記念シンポジウムin東京 開催報告
―コミッショニングの推進を目指して-
2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことが宣言され、省エネルギーを徹底し再生可能エネルギーを最大限活用することが示されました。カーボンニュートラルの実効ある実現に向けて、建築設備の性能に対するコミッショニングの重要性と必要性は高まってきています。そのような中、2024年2月16日(金)に開催された今回のシンポジウムでは、業界関係者の方々にコミッショニングの事例について講演いただきました。現地会場とWEB視聴との併用開催とし、現地会場35名、WEB視聴 18名の合計53名の参加者が講師4名の講演に耳を傾けました。
■基調講演:各種環境評価とコミッショニング
慶應義塾大学理工学部 システムデザイン工学科 伊香賀俊治様
これまでのCO2削減に向けた国内の様々な取り組みや、これからの建築物のホールライフカーボン評価に向けた海外動向と国内の算定ツールの整備状況についてご紹介を頂きました。今後はホールライフカーボン削減のために建て替えに替わりリノベーションがますます重要になってくること、カーボンニュートラルにより副次的便益やウェルネス便益があることをご講演いただきました。
質疑応答ではビルのみでなく戸建て住宅にもホールライフカーボンの対象になるのか、ウェルネス便益について経済的、コスト的価値に変換する手法があるのか等の意見交換がなされました。
■講演1:コミッショニングを普及させるには。設計者が考えるCxの利点と事例
株式会社久米設計 環境技術本部 上席専門部長 横山大毅様
設計者の立場から見たコミッショニングついてご講演いただき、コミッショニング事例として「愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所」をご紹介頂きました。ZEBに特化したCxを実施し、空調負荷計算では過剰となりがちな係数設定の合理化や、各種フェーズで設計者、施工者、運用者、使用者に向けたさまざまな文書を作成するなどを実施し、計画時のNealyZEBから『ZEB』を達成する興味深い事例となりました。また最後に徹底的に熱回収を利用したシステムでASHRAE最優秀賞を受賞した「帯広厚生病院」の紹介頂きました。
質疑応答ではCx業務について契約時に施主に明確なコスト提示を行ったのか、見積もりの方法はどうなのか、Cxの費用は分かりにくいので費用を開示していく事が重要など、施主、設計事務所の立場における議論がなされました。
■講演2:東京電力東尾久ビル本館におけるリニューアルZEBの実現
東京電力ホールディングス株式会社 土木・建築統括室 久保井大輔様
東京電力が所有するビルのリニューアルで初めてZEB Readyを取得した「東尾久ビル本館」の事例を紹介いただいた。既存の運用実績を基にした設計条件の精査と汎用技術の活用、3年間の設備チューニングで検証を行いながら実施した更なる省エネルギーへの取り組み、蓄熱槽を活用したコストを掛けずにできるニつの温度帯が供給可能な冷温水配管システムなどにて基準値に対して-65%の一次エネルギー削減を達成した事例であった。
質疑応答ではインハウスCxの場合の人件費をどのように考えるのか、蓄熱槽の施策は非常に有効なためゼロカーボンに向け既存ストック蓄熱槽への展開を期待するなどの意見、質問があり、久保井様からは蓄熱は再エネを蓄える器として今の時代にフィットした使い方を考えたいとのコメントもあった。
■講演3:虎ノ門エリアにおける機能性能検証の取り組み
森ビル株式会社 設計部設備設計部設備設計3グループ 課長 浅利直記様
中温冷温水を利用した空調システム、熱回収熱源システム、大規模蓄熱槽熱源システムを活用するLOBAS熱源・空調システムをコンセプトとする「虎ノ門ヒルズ森タワー」、熱供給施設と特定送配電施設を併設し、蓄熱槽、CGSを活用したデマンドレスポンス、AIを活用した熱源最適運用を行っている地域熱供給プラントの「虎ノ門エネルギーネットワーク」を紹介いただいた。
質疑応答ではAIを活用した熱源最適運用での進化について、需要予測チューニングの説明変数についてなどAIシステムに対する関心の高さを感じることができた。
現地開催、オンラインとの併用形式での開催にて多くの方に講演を聴講いただきました。また、シンポジウムの後に開催された技術交流会も大変盛り上がり有意義なシンポジウムとなりました。
<シンポジウムスケジュール>(敬称略)
13:30~13:35 趣旨説明 BSCA理事長 柳原隆司
13:35~14:05 基調講演 「各種環境評価とコミッショニング」
慶應義塾大学理工学部 システムデザイン工学科 伊香賀俊治
14:10~14:40 講演1「コミッショニングを普及させるには。設計者が考えるCxの利点と事例」
株式会社久米設計 環境技術本部 上席専門部長 横山大毅
14:55~15:25 講演2「東京電力東尾久ビル本館におけるリニューアルZEBの実現」
東京電力ホールディングス株式会社 土木・建築統括室 久保井大輔
15:30~16:00 講演3「虎ノ門エリアにおける機能性能検証の取り組み」 森ビル株式会社 設計部設備設計部設備設計3グループ 課長 浅利直記
16:30~18:30 技術交流会
活動実績 活動予定 他
◆協会活動実績 (2024/2)
2024年2月7日 第5回企画運営委員会
2024年2月16日 BSCA設立20周年記念シンポジウムin東京
◆協会活動予定 (2024/3~2024/4 )
2024年3月1日 BSCA設立20周年記念シンポジウムin関西
2024年3月4日 第4回Cxマニュアル改訂委員会
◆編集者より
梅の花が咲き始め、三寒四温とは言いませんが、日々暖かくなっている実感があります。受験や卒業式進級、異動のシーズンとなり、学生さんも社会人も大きな期待と少しの不安に胸を膨らませていることかと。そのような中、ついに鼻がムズムズし始めました。ここ2,3年はそれほど感じたことはないのでマスクによって護られていたのかもしれません。マスクの性能ってやっぱりすごいですね。コロナ禍が明けてマスクをつける機会が激減したこともあるかと思いますが、改めて頑張りどころの季節になったと実感しています。もう少しで新年度。残った山積みの仕事を片付けて、桜をむかえられるように頑張りたいと思います。
◆編集長より
先日、「天地明察』(てんちめいさつ)という本を読みました。映画化されたり、漫画にもなっておりますので、内容をご存知の方も多いと思います。平安時代から江戸時代初期まで中国の宣明暦(せんみょうれき)という「暦」を使用していたそうですが、現実と合わなくなったため、膨大な回数の天体観測をもとに新しい「暦」(大和暦)を作成するという史実の物語です。江戸時代初期に、1年は365日ではなく、365.24…日であることを理解していたり、月蝕や日蝕の日も予測していたことが書かれていますが、三角関数も代数学もない時代にどうやって計算したのかと驚きました。
スマホやアイパッドなどを見る機会が多く本を読む機会が減りましたが、アナログの本っていいなあと思いました。
◆企画制作
編集者:天野(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
編集長:大石(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
WEB版作成:小澤(建築設備コミッショニング協会 事務局)
※本誌に掲載した著作物の著作権は、特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会が所有します。許可無く複写転用することをお断りいたします。
お問合せメール:bsca_mail@bsca.or.jp(@を半角に)