コミッショニングレターVol.23 No.3(3月号)
2025/03/14掲載
第21期通常総会について
第21期通常総会・講演会の開催日時が決まりましたのでまずはご案内申し上げます。
会員の皆様におかれましては、ご予定頂けますと幸いです。
日時 2025年5月28日(水)13時30分 ~
場所 TKP新橋カンファレンスセンター
東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング14F カンファレンスルームB
スケジュール(予定)
1.通常総会 13:30~14:30
2.特別講演会
講演会1 15:00~15:45
講演会2 16:00~16:45
3.技術交流会 17:00~19:00
詳細が決まり次第、ホームページにてお知らせいたします。
2024年度 BSCAシンポジウムin関西 開催報告-1

CxPE 大石 晶彦
2025年2月6日(木)に大阪市内の電気倶楽部において「2024年度 BSCAシンポジウムin関西―コミッショニング事例紹介―」が開催されました。基調講演のほか「東急電鉄駒沢大学駅熱源・空調改修工事」、「神戸須磨水族園建替プロジェクト」のコミッショニング(Cx)について報告が行われました。現地会場とWEBの併用開催とし、現地参加43名、WEB視聴47名の合計90名の参加者が講演に耳を傾けました。本報では、基調講演及びCx事例1の講演概要を報告いたします。
■基調講演
「建築物の省エネ性能基準の義務化について思うこと」 京都大学名誉教授 吉田治典氏
建築の省エネ性能は設計図に基づき建築物省エネ法にて判断されており、バーチャル性能で判断されていると言える。リアルな実際の性能にて建築物の省エネ性能を判断すべきであるが、建築物は1品生産であり、リアルな性能で判断するのは多大な労力と時間がかかるためリアルな性能で評価することは非現実的である。今後はリアルな性能の向上が必要であり、性能設計への転換や実性能の検証が重要となると思われる。
■Cx事例1
「東急電鉄駒沢大学駅熱源・空調改修工事コミッショニング(施工フェーズ)」
1.プロジェクトの概要 東急電鉄㈱ 阿津英明氏
田園都市地下区間5駅リニューアルを実施している。空調設備更新を機会に既存設備の不具合改善、省エネルギー、駅構内環境の適正化、保守管理の合理化などを目標とし、発注者要件として循環式空調、設備可動部の固着検知、コンコースの空調温度改善、省エネ目標(▲15%)、クラウド利用による全駅空調管理システムを掲げた。
2.ホームの熱負荷軽減のための気流計画 東急建設(㈱ 立野岡誠氏
オープンな空間であるコンコースの空調を低温送風、特殊壁吹出し口を採用し実現した。CFD解析及びモックアップによる吹出し口の結露確認などを行い、ホームドア及びホーム上部の垂れ壁がコンコースの温熱環境維持に有効であることを確認した。
3.試運転調整 高砂熱学工業(株) 西崎圭氏
監視装置(SCADA)を利用して冷水温度計測値の正確性を確認した。具体的には空調機や冷凍機出入口の温度比較により温度センサー精度を確認し、ポンプ出口流量計と空調機出口流量計の流量比較により流量計の精度を確認した。また、冷水末端バイパス弁の動産確認を行い監視装置(SCADA)からの情報により末端圧力の適正化を実現した。
4.機能性能試験 建築設備コミッショニング協会 西山満氏
熱源機器(インバータターボ冷凍機、冷却塔)と空調搬送(空調機、パッケージエアコン、排煙ファン、ダクト)に関して機能性能試験を実施した。予め試験の合否判定基準を定めて、機器単体の機能性能試験と空調システムの機能性能試験を実施した。機器性能試験により何項目かの改善点が確認されており、今後改善策を実施する予定としている。
5.省エネと環境改善 - Before/After 前出 吉田治典氏
コンコース温度、空調システムについて、日変化及び冷房期間全体変化を検証した。温熱環境に関して、下りホームより上りホームのほうが若干、温度が高くなっている。これは、ホーム垂れ壁が未施工であり、来年度、再度検証を行う予定としている。改修前に比べてシステム全体の期間消費エネルギー削減率は50%程度となっている。またシステムCOPは改修前が2.35、改修後が3.85であり1.64倍に向上した。


2024年度 BSCAシンポジウムin関西 開催報告-2

Cx-PE 大石晶彦
休憩をはさんで、Cx事例2「神戸須磨水族園建替プロジェクト―熱源空調設備を対象としたコミッショニング―」、「よいCxとは~コミッショニング業務サポートの視点から~」が報告されました。神戸須磨水族園建替プロジェクトでは水熱源ネットワークを利用した熱源設備について報告がありました。「よいCxとは」ではCxをサポートする側より、いかにしてCxを成功させるかについて講演されました。
■Cx事例2
「神戸須磨水族園建替プロジェクト 熱源空調設備を対象としたコミッショニング」
1.プロジェクトの概要 ㈱竹中工務店 前田龍紀氏
水熱源システムの設計経験、GHP排熱回収ジェネリンクの導入、膜放射空調の実験検証、水冷システムと空冷システムの長短所の検証などを通して「計画~竣工後の事前、事後検証と公表の課題探求サイクルにより次のプロジェクトへ生きた知見を生かすことが重要」と考え始めた。本プロジェクトでは分棟化された熱負荷性状の異なる3つの建物を水冷システム+熱融通で最適化したいと考えた。熱源システムが複雑であり、制御も難解を極めたためCxを実施することとした。
2.神戸須磨シーワールドの概要と熱源水ネットワークの設計趣旨 竹中工務店 原瀬拓也氏
神戸須磨水族園はアクアライブ、ドルフィンスタディアム、オルカスタディアムの3棟からなる施設で大小150の水槽が設置されている。熱源としては、各棟の特性に合わせて水熱源機器(水冷チラー、温水ヒータ、水熱源エアコン、ターボ冷凍機など)を各棟に設置し、熱源水ネットワークにてそれぞれの棟を結び、熱回収を図っている。熱源水のカスケード利用や超大温度差送水、ジェネリンク容量適正化なども行い、省エネを推進した。なお、阪神大震災の教訓を生かしてBCPに配慮したインフラを構築している。
3.プロジェクトを支えた技術等-1 自動制御技術 アズビル㈱ 宮本大成氏
水冷式熱源の最大の課題は搬送動力の削減であり大温度差送水、配管抵抗の最小化が必要であると考えた。搬送動力を削減するために、通常は圧力制御とするところを各負荷の要求流量を設定値とする制御や、空気より比熱が圧倒的に大きい水槽の制御特性を生かしたシステムを提案した。本プロジェクトではCx会議が定期的に開催されたため、機器メーカーや設計者などの色々な意見、考えに接する貴重な経験となった。
4.プロジェクトを支えた技術等-2 空調システムシミュレーション活用 新菱冷熱工業㈱ 矢島和樹氏
実施設計フェーズ、施工フェーズ、運用フェーズにおいて継続的にLCEMを利用した空調システムシミュレーションを実施した。実施設計フェーズではモデル作成及びエネルギー性能把握を行い、施工フェーズでは最適制御の検討を行い、運用フェーズにおいては実績データによるモデル改善、最適制御の効果検証を行った。
5.プロジェクトを支えた技術等-3 機能性能試験1(施工者主体) 新菱冷熱工業㈱ 福谷篤正氏
施工期間中に行う機能性能試(FPT1)及び施工期間末期~竣工後3年の実運用期間に行う機能性能試験(FPT2)の一部を実施した。FPT1に先立ち、熱源機器の工場検査における重点確認項目の洗いだし、インテリジェントバルブ採用による流量調整業務の軽減などを検討、実施した。施工フェーズではいくつかの改善項目があったが、プロジェクト全体を通してCxを実施したため、致命的なものは無かった。
6.プロジェクトを支えた技術等-4 機能性能試験2(CM主体) ㈱コミッショニング企画 松下直幹氏
「搬送動力の最小化」、「放熱ロスを最小化」、「熱回収量を最大化」を目標にした熱源水ネットワークで3棟を接続する熱源システムの機能性能試験結果を報告する。搬送動力の最小化、放熱ロスの最小化は概ね達成できている。熱回収量の最大化に関して、初年度はCGSの運転方法に制約があったため想定外の結果となったが、来年度以降に当初想定の運転方法に切り替える予定としている。プラントCOPは概ねシミュレーションに近い結果となっているが、今後PID調整や制御ロジックの改善により、さらなる省エネを目指す予定である。
7.現在までのコミッショニングプロセスの総括 ㈱コミッショニング企画 松下直幹氏
本プロジェクトのCxの成功要因として「設計者の高く強い志」、「各フェーズで各分野のプロフェッショナルが終結」、「フェーズ間のスムーズな移行」があげられる。リバイスを繰り返し、精度を高めた設計主旨文書が作成されたことも大きな要因と考えている。
「すべての関係者が誇りに思う質の高い建物」、「あのプロジェクトに参加していたと自信を持って言える建物」を支えるのがCxではないか考えている。
■よいCxとは
「コミッショニング業務サポートの視点から」 Cx.さぽーと 渡辺佳容子
Cxの理念・本質はライアン・チェン氏の言葉「全ての関係者がこの責任を共有すれば、共通の目標に向かって一緒に働けます」と「成功したCxプロジェクトの最終結果は、すべての関係者が誇りに思う質の高い建物です」に表現されていると思う。実際のCx会議に参加して最初に感じるのは、会議参加メンバーがCxの経験が無かったり、すべてのメンバーがCxをプロジェクトの最優先事項とは考えていないため、一体感が無いということだ。CxチームをワンチームにするにはCA(コミッショニング・オーソリティ)のファシリテートが重要だと感じている。メンバーの話し方や内容からその心情を読み取り、相手の立場を思いやる余裕を持つことで、不安が解消され会議の雰囲気が変わってくる。共通の目標に向かって一緒に働ける、信頼関係のあるチームづくりが最も大切であり、相手の立場を理解し、心を寄せ、尊重する姿勢をメンバー全員が持つことが重要だと考える。Cxは、チームが成熟していくプロセスと言えるのではないか。
■パネルデスカッション
講演者の皆様によるディスカッションが行われました。会場からの質疑や、WEB視聴者からの質疑も多数あり、活発な意見交換が行われました。


活動実績 活動予定 他
◆協会活動実績 (2025/2 )
2025年2月6日 2024年度BSCAシンポジウムin関西
2025年2月25日 BSCA第6回企画運営委員会
2025年2月28日 CxPE座談会(関西)
◆協会活動予定 (2025/3~2025/4)
2025年3月5日 建物所有者向けCxガイドラインに関するシンポジウム
◆編集者より
三寒四温とは言いますが、香川でもやっと河津桜が咲き始めました。肌感覚でも例年よりも少し遅い気がします。最近小学校の卒業式では「河津桜が散り始め、ソメイヨシノのつぼみが大きく膨らみ・・・」とのフレーズを挨拶で使っていましたが、今後はどうなるんだろう?読めませんね。
先日、息子と兵庫にスキーに行ってきました。春スキーとはとても言えないくらいの積雪量で、今冬の寒さを実感しました。油断して花粉を吸いすぎたのか、目と鼻がかゆいです。いよいよ春到来ですね。
◆編集長より
東京で雪が降ると大ニュースになります。私も15年以上東京で暮らしていたので、雪が積もると地下鉄(部分的に地上を走っている)が止まったり、坂道で滑ったりした記憶があります。
最近はニュースにはなりますが、地下鉄が止まるほど雪が積もることは無いように思います。これも地球温暖化の影響でしょうか。学生時代は京都に住んでおり、大雪が降った時に徹夜してカマクラを作ったことが懐かしく思い出されます。大都市でカマクラを作るほど雪が降ることは金輪際無いと思うと寂しい気持ちになります。
◆企画制作
編集者:天野(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
編集長:大石(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
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