コミッショニングレターVol.23 No.6(6月号)

2024/06/03掲載

第20期通常総会 開催報告

建築設備コミッショニング協会の第20期通常総会が下記の通り開催されました。

今年度の通常総会並びに講演会は、実会合・オンライン併用のハイブリッド形式で開催となりました。

また、講演会終了後に技術交流会を開催し、会員で歓談を楽しみました。

 

    日 時   2024521日(火)13時30分 ~

 場 所  TKP新橋カンファレンスセンター ホール15C15階)

 

◆総会

20期総会は正会員222名のうち、総会出席者31名と委任状提出者69名の合計100名で定足数を満たしており適法に成立しました。その後、以下の議案の審議がなされ、すべての議案が議決されました。

・第1号議案「第20期事業報告及び収支決算に関する事項」

  第20期事業についての報告と収支決算報告、ならびに監査報告がありました。

事業執行に対する収支決算報告がなされた後、適切に処理されているという監査報告があり、本議案が承認されました。

・第2号議案「第21期事業計画()及び予算()に関する事項」

21期事業計画案が説明されました。

事業計画案の説明後、予算についても説明がなされこれらが承認されました。

・第3号議案「役員の選任に関する事項」

理事再任に関する事項、理事新任に関する事項、監事再任に関する事項の説明があり、これらの事項が承認されました。その後、新任理事の馳平氏、丸山氏より挨拶が行われました。

また、報告事項として、特別会員の新設にあたって、中原 特別顧問、松田 元理事、吉田 名誉理事長、山本 元理事、岡 元理事を特別会員とすることが承認されました。

 

◆講演会1

「建築設備設計・運用に関わる人工知能の現状と利活用」

大岡 龍三氏(東京大学生産技術研究所 教授)

 □要旨

 ・ANN(Artificial Neural Network)を用いたシミュレーション手法、メタヒューリスティクスによるエネルギーシステム運用最適化を建築設備技術者に馴染みのある統計学的手法とのアナロジーで解説する。

 ・ANNと物理モデルシミュレーションの比較においては、物理モデルが繰り返し計算による計算時間を要する。一方でANNを用いることで許容される誤差範囲の中で飛躍的に計算時間が短縮できる計算例を提示する。

 ・数学的に正しい最適解を求めるにも、事象が複雑なほど、計算負荷が高く解を得るのに時間がかかる。実用的な計算時間で許容できる精度とするメタヒューリスティクス手法を建築設備のコスト最小化に応用した事例を提示する。ただし、いくつかの手法では、高精度な結果を条件とした場合に計算が完了しないこともある。

 ・モデル予測制御を実際の建築設備制御に応用するには、設定値の変更間隔の間に計算を完了する必要がある。計算時間に優れるANNやメタヒューリスティクスの制御手法を展開した実証実験を行い、従来制御からの省エネ効果を確認した。このようなAI技術を制御に活用した4実例が実用上の成果を挙げている。

 ・今後の課題として、AI技術の効果確認、信頼性保証、結果の責任所在、エキスパートの役割について、議論を進めていく必要がある。

 

□質疑

・エキスパートシステム(熟練した専門技術者および手法)とAIではどちらが有効か。

 ⇒100点のうち90点を95点にするようなハイレベルな領域では、AI制御導入のコストが高価なためコストメリットが薄い。しかしながら、技術者不足を補うという目的では、高い効果を得る可能性があると考えている。今後のエキスパートは、AIが行った結果をジャッジすることにその能力を活用する役割になるのではないか。

 

◆講演会2

「サーキュラーエコノミー時代の建築~循環型建築のあり方とは?」

菊地 雪代氏(Arup

 □要旨

    ・近年、シェアリングやXaaSなどの新たなサービス・商品の提供方法が展開されている。こういった消費者行動の変化をとらえ、Arup社ではC2CCradle to Cradle)の概念を建築、建築設備に落とし込むガイドラインを策定している。しかし、ローカライズをするのが非常に困難である。サーキュラーエコノミーを建築設備で行うには、デジタルツインとXaaS型ビジネスのかけ合わせが相性良いのではないか。 サーキュラービルディングはまだ実例は少ないが、廃棄物マネジメントやリサイクルにとどまらない、本質的な理解をもとに日本のものづくりを大切にした行動が必要ではないか。

・「ぎふメディアコスモス」では、温熱環境・光環境が不均一な空間の提案を行うことで、省エネ約50%を達成した。この際に、環境が悪いというネガティブな印象とならないように「テラス」「フォレスト」などのようにネーミングをすることが重要な要素となった。ユーザーが建築の使い方をネーミングした空間毎に楽しむように提案できた事例である。

・欧州でのデータセンターを社会的利益貢献という視点で解説する。

・新たな消費行動のあらわれに伴い、建築においてもサーキュラーエコノミー(モノは売るな・建築は建てるな)を汲み取ったサーキュラービルのあり方を考える必要がでてきている。欧州ではデータセンターに社会的利益貢献を課す動きも見られる。今後どのような社会・建築とするか一緒に考えていきましょう。

 

□質疑

(会場の都合で中断)

◆技術交流会

 技術交流会では、柳原理事長より本総会を総括する挨拶とコミッショニングの展望が語られた。奥宮副理事長より乾杯の発声があり、会員同士の交流を深める場として盛況となった。本年のCxPE資格登録者2名、特別会員の岡氏が登壇し、今後の抱負を述べた。また、特別講演会で十分な質疑応答時間がとれなかったため、参加会員が講演者を囲み闊達な意見交換が行われた。

2024年度 CxTE講習会開催のお知らせ

13回となる講習会を、昨年度に引き続き「Zoom」によるオンラインで開催致します。機能性能試験や設備運転適性化などの検証業務を実行するCx専門技術者として、スキルと資質を修得できる講習会です。設備設計施工に携わる技術者、運転管理の技術者、エネマネ事業に携わる方、建築設備の勉強をされている学生の方等、全国各地からのご参加をお待ちしております。

 

13回 BSCA CxTE 講習会【講習プログラム】WEB開催(全国)

◆講習日時:2024年 719日(金)

◆開催時間:9:0016:30 Zoomを利用したオンライン講習会

◆参加定員:60名 (Zoom最大100名)

◆参加費用 

個人正会員:AB両方受講の場合 10,000円,AのみBのみ片方受講の場合5,000

※賛助会員企業からは2名まで受講費無料、3名目から上記の受講料となります。

一般   :AB両方受講の場合 20,000円,AのみBのみ片方受講の場合15,000

※学生の方 AB両方でも片方でも5,000

講習会プログラム

はじめに 9:15~9:20  司会進行:上谷勝洋(東洋熱工業)             

講習1  CxTE-A講習

9:20-10:10   計測技術 上谷 勝洋(東洋熱工業)

10:15-11:05  性能検証事例(水系性能検証) 小野 永吉(鹿島建設)

11:10-12:00  性能検証事例(空気系性能検証)田上 賢一(新菱冷熱工業)

講習2 Cx過程 全体講習

         13:15-14:00  TE-A,Bの定義 Cx業務過程全般について 上谷 勝洋(東洋熱工業)

講習3 CxTE-B 講習

         14:05-14:45  TE-B業務フロー概要   中村 北斗(梓設計)

         14:50-15:35  データ整理・可視化分析 山田 一樹(日建設計総合研究所)

         15:40-16:25  シミュレーション技術   山田 一樹(日建設計総合研究所)

 

      申し込みは、下記の協会ホームページを参照ください。

    http://www.bsca.or.jp/event/?p=1865

なお、CxTE登録申請並びに登録者リストに関しては下記の協会ホームページを参照ください。

http://www.bsca.or.jp/cxte/

 

「第1回コミッショニング賞」の表彰について

田上賢一

公益社団法人 空気調和・衛生工学会(SHASE)の第97期社員総会が510日(金)に明治記念館にて開催され、「第1回コミッショニング賞」を受賞された1業績の表彰式がありました。

この賞は、本協会の創設者であり特別顧問の中原信生先生の強い要望により新しく創設された賞で、今回が第1回の受賞式となりました。表彰式には、中原先生自ら表彰状の授与者として登壇され、表彰状授与に加え、表彰者一人ずつに握手をされました。栄えある第1回の表彰者の皆様、おめでとうございました。

 2050年のカーボンニュートラル社会の実現のためには、新築建物はもちろん事、特に既存建物の脱炭素化が非常に重要となりますが、これを達成するにはコミッショニングプロセスの適用が必須と言っても過言ではありません。これまで、コミッショニングプロセスの実施により、省エネ効果を始めとする多くのベネフィットを得られた実績をお持ちの方は、今後のコミッショニングの普及促進の観点からも、是非とも応募してみてはいかがでしょうか。

 

<第1回コミッショニング賞>

業績名称

「虎ノ門・麻布台地区におけるAI技術を活用した次世代型電熱供給エネルギープラントの構築に向け

たコミッショニング」

表彰者(敬称略)

企画・運営:虎ノ門エネルギーネットワーク㈱

計画・設計:森ビル㈱

計画・設計・評価:東京電力エナジーパートナー㈱

設計:㈱日本設計

施工:高砂熱学工業㈱

評価:大岡 龍三

評価:池田 伸太郎

評価:西川 雅弥

 

活動実績 活動予定 他

◆協会活動実績 (2024/5)

2024年5月21日  第20期通常総会

◆協会活動予定 (2024/62024/7 )

  2024627日(木)第2回企画運営委員会

  2024719日(金)2024年度CxTE講習会

◆編集者より

 2024521日(火)の第20期通常総会が「TKP新橋カンファレンスセンター」で開催され、講演会、交流会と参加しました。コロナ禍で多くのイベント開催が中止や、規模縮小で粛々と開催していた頃が信じられないくらい大盛況に終わりました。交流会では数年ぶりに顔を合わせ、所属が変わり改めて名刺交換される方も多くおられました。1年に1回開催される総会は、当協会の活動に賛同する多くの仲間が集まる貴重な機会である事を身に染みて感じました。

 

◆編集長より

20期通常総会の講演会で「サーキュラーエコノミー時代の建築:菊地 雪代氏(Arup)」を聴講しました。「サーキュラーエコノミー」とは資源の効率的かつ循環的な利用を図りつつ、付加価値の最大化を目指す経済システムを意味するとのことです。現状の大量生産、大量廃棄をおこなう社会システムはリニアエコノミー(一方向の線形経済)と言われており、資源の循環を行い「まるい」経済システムにすることが肝要とのことでした。リユース、リサイクルをもっと進めた概念であり、共感を覚えました。

リユース、リサイクルなど、できることから、私も始めたいと思います。

    

  ◆企画制作

   編集者:田上(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)

   編集長:大石(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)

 WEB版作成:小澤(建築設備コミッショニング協会 事務局)

 

※本誌に掲載した著作物の著作権は、特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会が所有します。許可無く複写転用することをお断りいたします。

お問合せメール:bsca_mail@bsca.or.jp(アットマークを半角に)

 

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