コミッショニングレターVol.20 No.2(2月号)
2023/02/08掲載
2022年度BSCAシンポジウムin関西
BSCAでは2023年2月15日(水)に「コミッショニングの推進を目指して― 2022年度BSCAシンポジウムin関西 」を開催いたします。
シンポジウムではコミッショニングに必要な技術・ツールとして今後不可欠となる様々なアプリケーションに関する研究紹介、ならびにCx事例紹介を行います。
奮ってご参加ください。
◆開催日程:2023年2月15日(水) 13:30~16:55
◆開催場所:TKPガーデンシティー京都タワーホテル 6階ナポリ・ミラノ+WEB配信
(京都市下京区烏丸通七条下ル東塩小路町721-1 京都タワーホテル)
◆定員 :現地:80名、WEB:80名
◆参加費 :5,000円(正会員・賛助会員)、10,000 円(一般)、1,000円(学生)
◆申込締切:2023年2月8 日(水)
◆主催 :建築設備コミッショニング協会
◆プログラム
13:30~13:40 趣旨説明 BSCA理事長・京都大学名誉教授 吉田治典
13:40~14:10 講演1
スマートビルのためのアプリケーションとメタデータ・プラットフォーム
活用の期待(東京大学・宮田翔平助教)
14:10~14:35 講演2
クラウドを用いた統合ワークプレイス管理の実現について
(パナソニック㈱ 谷川匡・鈴木勇至)
14:35~14:45 休憩
14:45~15:10 Cx事例1
立命館慶祥中高熱源空調改修プロジェクトのトータルコミッショニング
CMT 松下直幹(㈱コミッショニング企画)
発注者 坂本英彦(学校法人立命館)
15:10~15:35 Cx事例2
ゼネコン主導のインハウスコミッショニング事例(須磨水族園リニューアル工事)
Cx発注者/設計者 前田龍紀(㈱竹中工務店)
15:35~16:00 Cx事例3
髙島屋グループのコミッショニング展開(全店舗の既存・新築・継続Cx展開)
発注者 清沢知成(東神開発㈱)
16:00~16:10 休憩
16:10~16:50 質疑応答・パネルディスカッション コーディネーター:前出 吉田治典
お申し込みは下記URLよりお願いします。
Cx事例シンポジウムin東京 開催報告
Cx事例シンポジウムin東京:コミッショニングの推進を目指して
馳平 心
2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことが宣言され、省エネルギーを徹底し再生可能エネルギーを最大限活用することが示されました。カーボンニュートラルの実効ある実現に向けて、建築設備の性能に対するコミッショニングの重要性と必要性は高まってきています。2021年4月に施行された改正建築物省エネ法では、個別分散空調システムの採用が多い中規模のオフィスビル等が基準適合義務の対象へ追加されました。そこで2022年度のCx事例シンポジウムin東京では、コミッショニングのますますの推進を目指すためNEDO調査研究として佐藤エネルギーリサーチ株式会社にて実施した「ZEB実現に向けた個別分散空調システムの設計ガイドライン作成に関する研究」について関係者の方々に講演頂きました。現地会場とWEBとの併用開催とし、現地会場29名、WEB 64名の合計93名の参加者が講師7名の講演に耳を傾けました。
はじめに、基調講演として工学院大学の野部達夫様よりパッケージ型空調機について、これまでの研究に基づいた効率評価の手法、実測事例での機器負荷率、部分負荷特性、エネルギー消費効率等や、空調負荷に対する設備容量の冗長性の考え方、部分負荷時の運用効率向上の評価法などパッケージ型空調機の課題と展望についてご講演頂きました。
「ZEB実現に向けた個別分散空調システムの設計ガイドライン作成に関する研究」では6報(前半3報、後半3報)に分けて講師の方から紹介頂きました。
その1では、佐藤エネルギーリサーチ㈱ 佐藤誠様から研究の背景と目的、研究内容、建築物省エネ法の届出状況からの設備容量調査、実務設計者に対する設計法について、その2では、神奈川大学 芹川真緒様から10物件、98系統のビル用マルチエアコンを対象とした実稼働状態に係る実測における運用時の効率やそれに影響を与える要因の把握について、その3では、国土交通省国土技術政策総合研究所 宮田征門様からシミュレーションモデルの精度検証用データを取得することを目的とした、試験室でのビル用マルチエアコンのエネルギー消費特性に関わる試験の結果について紹介頂きました。
前半3報の質疑応答では過大設計となっているビル用マルチエアコンの設備容量に対する、冗長性と省エネ性について闊達な意見交換が行われ、省エネを目指すには適正な設計による容量選定が重要であるものの、コロナ対策による換気量が増大するような非常時にも備えられるような拡張性を備えることも重要などと言った議論がなされました。
その4では、工学院大学 富樫英介様からこれまでの特性モデルでは評価が難しかったVRFのエネルギー計算モデルを、物理モデルを組み合わせた新たなVRFモデルとした内容について、その5では佐藤エネルギーリサーチ㈱ 辻丸のりえ様から新たなVRFモデルを用い、00_基準(ZEB)、01_低外皮性能、02_全熱交換機無し、03_コンセント発熱過大設計、04_室外機系統混在の5つのケーススタディ結果の報告について、その6では㈱日建設計 佐藤孝輔様からガイドラインの目的と個別分散システムの計画、設計、運用段階のそれぞれのポイントについて、実測・実験、及び評価計算モデルのケーススタディの結果をもとにした留意点を紹介頂きました。
後半の質疑応答では、これまで難しいと考えられていたビルマルチエアコンのシミュレーションがガイドラインとして整理できたこと、経験年数の浅い設計者にも非常にわかりやすいガイドラインとなったことについて意見がありました。
最後にZEBの事例、ZEBを目指した商材について紹介頂きました。
竹中工務店 白石晃平様からは運用実績においてもNearly ZEBを達成しつつも、ZEB建築を一般ビルと同等のコストで実現し、今後のZEB普及を目指した取り組み事例としてテイ・エステック新本社ビルについて紹介頂きました。
ダイキン工業㈱ 枝廣克幸様からはZEB実現に向けた商品の紹介として高COPのVRF、DCモーター搭載の全熱交換器・DESICAなどの紹介や、寒冷地ビル用マルチ、低GWP冷媒転換、産業用ヒートポンプ転換など、三菱電機㈱ 四十宮正人様からはZEBの実証棟(SUSTIE)での導入技術の紹介、開発中の最新技術・製品の紹介頂きました。
質疑応答では、ZEB計画時に内部負荷を低減させた場合の冷暖房ピーク負荷の違いや、低GWP冷媒の今後についてなど多角的な議論がなされました。
現地開催、オンラインとの併用形式での開催となりましたが、多くの方に講演を聴講頂き、大変有意義なシンポジウムとなりました。またシンポジウム内容は1月11日にyou tube にて配信されました。
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<シンポジウムスケジュール>
13:30~13:35 趣旨説明 BSCA副理事長 柳原隆司
13:35~14:10 基調講演 工学院大学 建築学部建築学科 教授 野部達夫
14:10~14:20 「ZEB実現に向けた個別分散空調システムの設計ガイドライン作成に関する研究」
その1:研究概要と個別分散空調システム設計の実態調査
佐藤エネルギーリサーチ㈱ 佐藤誠朗
14:20~14:30 その2:実測調査による稼動実態把握 神奈川大学 芹川真緒
14:30~14:40 その3:試験室におけるビル用マルチエアコンの実働特性の測定
国土交通省国土技術政策総合研究所 宮田征門
14:40~14:55 質疑応答・休憩
14:55~15:05 その4:個別分散空調システムのモデル化と実験データによる検証
工学院大学 富樫英介
15:05~15:15 その5:モデル建物を用いた省エネルギー性能に関するケーススタディ
佐藤エネルギーリサーチ㈱ 辻丸のりえ
15:15~15:25 その6:計画・設計・運用ガイドラインの概要 ㈱日建設計 佐藤孝輔
15:25~15:30 質疑応答
15:30~15:40 「~ZEBをもっと身近に®~脱炭素社会実現に向けた普及型ZEBの取組み」
㈱竹中工務店 白石晃平
15:40~15:50 「カーボンニュートラルに向けたご提案」
ダイキン工業㈱ 枝廣克幸
15:50~16:00 「カーボンニュートラルに向けた取り組みと最近の空調製品のトレンド」
三菱電機㈱ 四十宮正人
16:00~16:05質疑応答 ※敬称略
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-以上-
Cx事例シンポジウムin中部 開催報告
Cx事例シンポジウムin中部- ZEBとコミッショニング-
山羽 基
2023年1月20日(金)にCx事例シンポジウムin中部「-ZEBとコミッショニング-」を開催した。開催は、会場参加とオンラインのハイブリッドで実施された。参加者は講師4名、パネラー・司会 4名、現地参加22名、オンライン参加者49名の合計79名であった。
まず、中部大学の山羽基(執筆者)より挨拶とシンポジウムの主旨説明をし、前半では2つの基調講演が行われた。
1つ目は上谷勝洋(東洋熱工業)氏より「ZEBのコミッショニング手法 ZEBシステムの機能性能試験標準仕様の提案」と題し、空気調和・衛生工学会コミッショニング委員会でまとめられたZEBシステムの機能性能試験標準仕様書の説明がなされた。はじめに、コミッショニング(以下Cxと称す)プロセスの概要が示され、OPRの作成、機能性能試験による定量的な検証、文書化の3つの重要性が強調された。学会Cx委員会では、これまでに多くのシステムに関して機能性能試験標準仕様書を作成した。ZEBシステムに関するCx手法検討小委員会では、12のZEB関連システムの機能性能試験について検討を行った。仕様書の内容、適用方法を説明し、地中熱利用システムについて実施例を示し、試験と計測方法、評価について紹介があった。
二つ目は、渡邊剛氏(NTTファシリティーズ)より「新築建物のCxプロセスの適用 NTTファシリティーズの新大橋ビルの新築設備Cx適用の考え方」と題して、小規模であるが先進的技術を取り入れたオフィスビルの新築Cxとその後の運用について説明がなされた。新大橋ビルの設計コンセプト建物概要が説明された。新技術を取り入れた実証実験型オフィスとして基準を明確化し、運用を通してゼロ・エネルギービルを実現すること、会社として知見の少ないオフィスビルのノウハウを得たいというのがCx実施の動機であった。設計段階のCxはインハウスで、本体工事後付帯工事開始の時点で外部のCAを入れたCxを行った。第三者を入れて性能を検証することで、原点が明確になり、その後の改修や新技術の適用の評価が的確に行えた。
ここまで、前半の2つの基調講演が終了し、休憩時間を挟み、後半の2つのCx事例紹介の講演を行った。
一つ目は佐藤孝広氏(日建設計)により「ゼロ・エネルギー・スクール 瑞浪北中学校」と題し、岐阜県の中学校の事例が紹介された。市内の中学校3校が統合するにあたり、学校施設のゼロ・エネルギー化、環境教育の促進の取り組みを全国に発信することを目的に様々なZEB化技法を取り入れた学校とした。焼き物の街瑞浪の登り窯をイメージした自然換気導入の断面計画、クールウォームトレンチによる涼房・温房、太陽熱のパッシブ的な利用などによりゼロ・エネルギーを目指している。生徒自ら育む環境教育を通してNetゼロ・エネルギーを実現している。
二つ目は、水野孝政氏(丸水設備)より「小規模オフィスにおけるZEBの計画と運用」と題し、ZEBプランナーとしての活動と本社ビルの説明があった。小規模オフィスビルのZEBモデルを目指して計画した本社ビルは、限られた予算の範囲で工夫を凝らしている。太陽光発電、高効率空調熱源、光ダクト等を設置している。設計におけるWebプログラムの計算値を示しZEB ready であることが示され、その後の運用でNearly ZEBとなっている。運用について実績を示しながら丁寧な説明がなされた。
最後に、シンポジウムの4名の講演者と奥宮正哉氏(名古屋産業科学研究所)、田中英紀氏(名古屋大学)をパネリストとし、山羽の司会により、参加者からの質疑の後に、パネルディスカッションが行われた。省エネルギービルとしてのZEBの意義、それらを支える技術が確認された。CxはZEBであっても建築設備がしっかりと設計され運用されることが目的であることは変わらない。そのためのツールは学会、本協会で準備している。学校においては、使用者である生徒の環境意識向上に意義がある。シンポジウムで取り上げた小規模の建物でもCxによる検証の重要性を認識できた、等の意見があった。
今年度は、はじめて対面参加とオンライン参加のハイブリッド形式での開催としたが、事務局から木虎氏が来場し支援をいただき実施することができた。記して謝意を示します。また、パネルディスカッション時に一時音声の不具合があった点について、お詫び申し上げます。
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<シンポジウムのレジメ>
司 会 名古屋大学大学院 環境学研究科都市環境学専攻 鵜飼真貴子
13:30~13:40 ご挨拶と趣旨説明 山羽基(中部大学)
13:40~14:10 基調講演1:ZEBのコミッショニング手法
ZEBシステムの機能性能試験標準仕様の提案 上谷勝洋(東洋熱工業(株))
14:10~14:40 基調講演2:新築建物のCxプロセスの適用
NTTファシリティーズの新大橋ビルの新築設備Cx適用の考え方
渡邊 剛(((株)NTTファシリティーズ)
14:40~14:50 質疑応答
14:50~15:00 -休 憩-
15:00~15:30 ゼロ・エネルギー・スクール 瑞浪北中学校 佐藤孝広((株)日建設計)
15:30~16:00 小規模オフィスにおけるZEBの計画と運用 水野孝政(丸水設備(株))
16:00~16:45 パネルディスカッション
(参加者:講演者+奥宮正哉(名古屋産業科学研究所)+田中英紀(名古屋大学)) 司会:山羽 基
-以上-
活動実績 活動予定 他
◆協会活動実績 (2022/1)
2023年1月20日(金) 2022年度 Cx事例シンポジウムin中部
◆協会活動予定 (2023/2~2023/3)
2023年2月10日(金) BSCA第5回企画運営委員会
2023年2月15日(水) 2022年度 BSCAシンポジウムin関西
◆編集者より
2023年も早いもので、2月に入り、厳しい寒さが続いています。ロシアのウクライナ侵攻は、周辺諸国からウクライナに対し兵器類の提供があり、戦いが終わるどころか増々泥沼化する気配を感じます。政府は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる事を決定したようですが、これも賛否両論があり、しっくりいかない点がもどかしく感じます。スッキリ、爽快な話題を期待したいものです。
◆編集長より
BSCAシンポジウム東京、中部が開催されました。2月15日には関西でもシンポジウムが開催されます。既に開催された東京、中部の参加者は現地参加よりWEB参加人数が多い結果となっていました。
東京、名古屋、大阪で開催される講演会やシンポジウムを世界のどこでも視聴できる日がくるとは、コロナ以前には想像すらできませんでした。ICTの進化で世の中が大きく変わっていることを実感します。コミッショニングに関する技術も格段に進歩しています。クラウドから中央監視データを取得できたり、無線でテンポラリー計測機器のデータ収集などが可能になっています。もう少ししたら、AIで自動的に設備システムの最適運用ができるようになるかもしれません。そんな日が待ち遠しいです。
◆企画制作
編集者:田上(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
編集長:大石(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
WEB版作成:小澤(建築設備コミッショニング協会 事務局)
※本誌に掲載した著作物の著作権は、特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会が所有します。許可無く複写転用することをお断りいたします。
お問合せメール:bsca_mail@bsca.or.jp(アットマークは半角に)