コミッショニングレターVol.19 No.10(10月号)
2022/10/14掲載
- 2022年度 CxPE(性能検証技術者)資格研修会
- 2022年度 第11回CxTE 講習会 開催報告
- 大阪ビルディング協会技術委員会におけるCx説明会 開催報告
- CxPE座談会報告 東京 第3回
- 活動実績 活動予定 他
2022年度 CxPE(性能検証技術者)資格研修会
建築設備コミッショニング協会では、コミッショニングの社会的な普及を目的とした活動の一環として、性能検証技術者資格試験制度・登録制度に基づくCxPE(性能検証技術者)の資格登録を行ってきており、現在までに、12回の研修会を実施し105名の方が資格登録者となられています。
今年度は、下記の要領で資格試験を含む研修会を実施いたします。皆様におかれましては、この機会に奮ってご参加いただきますようご案内申し上げます。
第13回(2022年度) CxPE(性能検証技術者)資格研修会
◆開催日程 2022年12月9日(金)~2022年12月10(土)
◆開催場所 大阪市北区堂島浜2-1-25 中央電気俱楽部 317号室
◆定員 15名(先着順)
◆参加費 個人正会員60,000円(賛助会員枠はございません)
一般 80,000円(*1 )
◆申込締切 2022年10月14日(金)
◆主催 建築設備コミッショニング協会
(*1)資格研修会申込時に個人正会員の申込を行えば、会員の参加費でご参加いただけます。
申し込みは下記HPよりお願いいたします。
http://www.bsca.or.jp/event/?p=1628
2022年度 第11回CxTE 講習会 開催報告
CxPE 田上賢一
第11回CxTE講習会は8 月26 日に昨年と同様にオンライン形式で開催されました。今年度は全国から計13名の方に参加頂きました。
今年度の講習会も昨年度までと同様にCxTE の持つべき資質と技能についての講義と必要な技術に関する演習を実施しました。
プログラムとしては午前中にCxTE-A 講習を上谷勝洋氏(BSCA理事)、田上賢一氏(BSCA理事)、三浦克弘氏(鹿島建設)が行いました。その後、昼休みを挟んで午後の最初にCxTE-A およびB に共通する全体講習を上谷氏、次にCxTE-B 講習を中村北斗氏(梓設計)、山田一樹氏(日建設計総合研究所)が行いました。
今回の受講者数は名、CxTE-AとB の両方の受講者、合計13名が受講されました。
受講者には、修了証書が後日発送される予定です。当協会ではCxTE が世の中に広く認知され、その需要が高まることを目指して、CxTEの経歴を公開する登録制度を運用しています。
昨年度までに60名の方が登録されています。登録内容はCx 業務に必要となる人的リソース情報として公開しております。
CxTE登録申請並びに登録者リストに関しては下記の協会ホームページを参照ください。
http://www.bsca.or.jp/qualification/cxte.html
今回の講習会を通じて、自らの技術がCxTE に要求される資質と技能のレベルを備えていると判断された受講修了者の皆様には、主旨を理解いただきBSCAに登録していただきたいと考えております。登録時にはBSCA への入会もご検討頂けると幸いです。
大阪ビルディング協会技術委員会におけるCx説明会 開催報告
CxPE 山口弘雅
2022年9月5日、大阪ビルディング協会の技術委員会(大阪ガスビル8階のガスビル食堂会議室にて開催)において、コミッショニングに関する説明会を実施いたしました。この技術委員会は主に不動産オーナーやビル管理技術者から構成され、当日は23名の委員が参加されました。コミッショニングについて初めて触れる方も多くおられましたが、皆さん熱心に聴講され、活発な質疑応答がなされました。講演内容ならびに質疑応答の概要は以下の通りです。
1.ご挨拶および講演者紹介(BSCA吉田理事長)
冒頭、吉田理事長より、コミッショニングの概要ならびに必要性について説明されました。建築プロジェクトの決定プロセスの透明化・オープン化と各段階における検証が重要であることなどを述べられました。
2.カーボンニュートラル達成へ向けたコミッショニングのススメ(BSCA伊藤理事)
次に、伊藤理事より、2050年カーボンニュートラル達成には、需要家側の徹底した省エネが必要であること、また実現のためにコミッショニングの果たす役割が大きいことが述べられました。Cxプロセスの詳細、OPRの重要性、国土交通省の告示や東京都トップレベル事業所制度における加点項目の紹介、発注者の課題とCxによるメリットなどを導入事例紹介も交えて説明されました。
3.不動産経営者の視点からのコミッショニングの価値・実績(元京都駅ビル開発 髙浦氏)
最後に、髙浦氏より、京都駅ビルでの経験をもとに、従来のやり方ではなく何故Cxでなければならなかったかについて説明されました。本気でやればCxはビルオーナーに利益を生むこと、既存建物の脱炭素化に向けては従来行われてきた営業上の理由によるリニューアルに合わせた老朽化取り換えではなく、大幅な省エネを行い、それを投資回収するという設備部門が主導する設備更新が重要であること、Cxは空調だけでなくビルの受変電設備の更新などにも従来とは違った発想を生み出したことなどを、具体的な数値を用いて述べられました。
4.質疑応答
Q. Cxを実施するのに最良のタイミングがあれば教えて欲しい。
A. なるべく早くに着手されることをお勧めする。新築建物では設計者が決まる前にOPRを定めることが非常に重要。既存改修の場合は事前調査とデータ分析に時間をかけるべきである。データに基づく議論と判断がプロジェクトの支えとなる。
Q. 京都駅ビルでは設計者が120億円と見積もった工事費がCMTによる検討を経て70億円程度に削減できたということだが、具体的にどうやって削減したのか。
A. 過剰設計を見直し熱源容量を約20%削減したことと百貨店系統では冷暖同時運転がないことから冷水コイルを冷温水コイルに変更したことが大きい。いずれもデータに基づいて関係者がコミッショニング会議で議論して決定した項目である。
Q. 10年ほど前に大阪ガスビルでも当協会にコミッショニングによる検証を依頼した。当時と今でコミッショニングはどのように変わったか。省エネに関する提案も期待していいのか。
A. 当時コミッショニングは性能検証作業と理解されることが多かったが、本日、説明したようにコミッショニングは省エネ達成のためのプロセスである。従って省エネをどのようにOPRに盛り込むかをCx会議で提案し、それを基に性能の検証をしている。
Q. BSCAはカーボンニュートラルに向けた提案も行ってくれるのか。
A. 当協会はNPOでありビジネスとしてCxを展開する団体ではないが、カーボンニュートラルを宣言したオーナーと共に先導的なCxに取り組んだ事例はある。具体的に現在進行形のプロジェクトでもESGの達成という観点からコミッショニングを位置付けて進んでいて世間に向けた広報もされている。
左写真:吉田理事長の講演の様子 右写真:会場全景
CxPE座談会報告 東京 第3回
建築設備コミッショニング協会(BSCA)では、「Cxの普及並びにCxPEの活躍方法に関する意見交換会」としてCxPE座談会を東京(1回)、関西(2回)にて実施いたしました。Cxレターでは全3回のCxPE座談会で議論された内容を下記の通り9回にわけてお伝えします。
今月号はCxPE座談会(東京)の第3回目の内容をお伝えします。
Cxレター2022年2月号 CxPE座談会 関西その1 1回目
Cxレター2022年3月号 CxPE座談会 関西その1 2回目
Cxレター2022年4月号 CxPE座談会 関西その1 3回目
Cxレター2022年5月号 CxPE座談会 関西その2 1回目
Cxレター2022年6月号 CxPE座談会 関西その2 2回目
Cxレター2022年7月号 CxPE座談会 関西その2 3回目
Cxレター2022年8月号 CxPE座談会 東京1回目
Cxレター2022年9月号 CxPE座談会 東京2回目
Cxレター2022年10月号 CxPE座談会 東京3回目
―CxPE座談会(東京) 参加者―
伊藤英明(東京電力エナジーパートナー㈱)、佐々木邦治(丸の内熱供給㈱)、梶山隆史(大成建設㈱)、上谷勝洋(東洋熱工業㈱)、河村貢(NTTファシリティーズ)<web参加> 木虎久隆(関西電力㈱)、高草智(㈱森村設計)、竹部友久(㈱日本設計)、柳原隆司(BSCA副理事長)、山田一樹(㈱日建設計総合研究所)
[柳原]不動産開発会社は賃料を重要視している。建物建設場所と建物仕様が消費者のニーズに合っているかが重要であり、省エネには重きを置いていないように思う。
[竹部]大手不動産開発会社は変わってきている。建物を色々な意味で良いものにしていかないといけないという危機感はかなりあると感じている。
[柳原]新しい首相は正しい認識お持ちで、まず省エネ、次にエネルギー電化、それで電気が足りなければ既存の原子力を安全性確保の上で稼働させると言われている。国交省、経産省、環境省に、こういう省エネ手法を採用すれば10%くらい省エネが実現でき、きちんとしたコンサルを行えば50%近くの省エネが実現できるという事実を認識してもらう必要がある。
[佐々木]地道に発信しないとダメだと思う。空衛学会賞は竣工後1年以上経過した建物が対象となるが、それを3年以上にすることなども一つの手段だと思う。そうすると3年間、大学の先生等を入れて性能検証を行い、1年目よりも2、3年目には省エネ改善されたという報告が多くなってくると思う。そういうものが一般的になると、造りっぱなしではダメだという認識が広まっていくと思う。性能検証やCxを行うと利益があると判ると、やってみようとする人が増えてくるのではないだろうか。
[竹部]現状では人材の問題がある。今でも人材不足の状態で、そこに時間を使うとなるともっと厳しくなる。
[高草]ESCO事業を手掛けていたころ、最初は何も省エネをしていない建物に対策する方が簡単だと思っていたが、意外なことに省エネ投資をそれなりにして、それでおしまいになっているケースがあり、追加の性能検証で省エネ率が上がる場合が多いことに気が付いた。
[高草]某ビルで省エネ改修を大手ゼネコンが実施し、エネルギー消費量が下がるはずだったのに下がらなくて建物オーナーに呼ばれたことがある。DHCの物件だったが、自動制御の再調整を実施すると、ポンプやファン動力だけではなく冷熱・温熱量もかなり下がり、年間数千万円の光熱費削減になった。再調整後の3年間のコスト削減分をオーナーとESCO会社で折半する契約としていたが、双方ともに大変満足度の高い案件となった。高度で複雑な自動制御が導入されている場合、やりようによっては改善の余地は大きいと感じている。
[柳原]その結果が一般的な常識になり、あの人達に相談するとエネルギー消費量の削減ができるという雰囲気が出てくることが重要だと思う。
[山田]自動制御設備が当初の設計意図通りに機能していない建物は沢山あると思う。今までBSCAはどちらかと言うとトップランナー建物のCxをやってきているように思うが、前述の河村氏の取り組みのように、身近な建物でCxを行い、その成果を公表できればCxの推進力になると思う。学会賞を取れるような建物で経費かけてやったとは言われなくなる、Cxのハードルが下がってくるのではないかと思う。
[柳原]以前、省エネセンターが経産省から費用をもらい無料で省エネ診断を行っていた。それと比較されてしまう。省エネセンターの診断はコメントするだけで未評価だった。省エネ診断にプラスアルファを付け加えるところがCxの特長だと訴えないといけない。
[佐々木]逆にCxについて補助金を出してもらって、Cxを無料で実施することができればCxが普及すると思う。
[柳原]脱炭素問題が大きくクローズアップされており、環境省と上手くタイアップできればと思う。
[竹部]個別分散空調システムに関して、投入エネルギーはわかるのだが、どれだけ仕事をしているのかがわからない。COPの把握が困難だ。
[山田]個別分散空調システムの場合、エネルギー消費量を減らすとなると運転を停止する、設定温度を緩和するくらいしかない。エネルギー消費量を削減するには前述の東大の事例のように、運用データを蓄積しておき改修時には、しっかりと空調容量を削減し、その省エネ成果を計測することが大切だと思う。
[竹部]個別分散空調システムの設計は結構難しくて、どのくらい容量を小さくしてよいかわからない。投入エネルギーを計測していないケースが多いが、計測したとしても、その結果をどう生かすかが難しい。
[河村]個別分散空調システムに関しても、省エネは時間と効率の積分値なので、先程の照明と一緒で止めるというのが大切だ。運転しっぱなしにしない運用面が重要である。空調を1日1時間停止するだけ10%のエネルギー消費量削減ができるが、多数ある室内機の運転管理をどのような方法で行うかがポイントとなる。BEMSのように見える化していくことが良いと思う。省エネの特徴のひとつは、耐震、劣化診断のような建物診断に比べてエネルギー診断は見えないことである。見える化から始めなければならないと思う。
[木虎]個別分散空調システムの改修工事で、原因はよくわからないが暑い等の不具合が出ており、改修時に容量を大きくするとことが多いように思う。現状把握できないためそのようになる。
まとめ
[山田]
エネルギー消費量削減に関して計画段階、運用後のエネルギーマネジメントについてまだまだ踏み込む余地があるのではないかと意見があった。そういうところでCxの有用性をアピールできるという意見等もあった。
複雑な自動制御をもつ空調システムだけでなく、個別分散空調システムに対する取り組みも重要であるという中で行政への働きかけや、見える化の仕組みといったものも重要だと感じた。Cx、性能検証にかかるフィーは行政からの補助金や政策といったところで補充していき、スペシャリストが活躍しやすい場を作っていくということがBSCAとして重要になってくると感じた。
[柳原]今後、CxPEの交流会を企画するので、どんどん参加し意見交換して、Cxをやった方が良いと思う人を増やすような場を作っていきたいと思っている。同時に行政への働きかけも行いたいと考えている。また、CxPEの資格研修会も予定しており、ぜひ会社内で声をかけてもらえればと思う。
[山田]今度Cxの表彰をするという話があったかと思うが、各社でやっているスポット的なCx的なものをBSCAの媒体を使ってアピール、展開していくのも裾野を広げていくのに重要だと思っている。
[柳原]中原先生が空衛学会に寄付をされて、Cx賞を作ってもらいたいという申し出があった。中原先生の強い想いがあるので、ぜひご賛同、ご協力をお願いしたい。
■最後に
CxPE座談会を3回(東京、関西(2回))で開催しました。BSCAでは初めての取り組みでしたが、総勢30名以上のCxPEの方に参加いただき、色々なご意見を頂戴しました。
CxPE座談会に参加くださった皆様からの貴重なご意見を参考にBSCAではCxの普及、推進を進めて参りたいと思います。
最後に、CxPE座談会に参加いただきましたCxPEの皆様、BSCA関係者の皆様に改めまして御礼申し上げます。(編集長 大石晶彦)
活動実績 活動予定 他
◆協会活動実績 (2022/9)
2022年9月14日(水)~16日(金)空衛学会大会技術展示 出展
2022年9月20日(火) ACSES/Cx公開ワークショップ(第5回)
2022年9月30日(金) 2022年度 第3回 企画・運営委員会
◆協会活動予定 (2022/10~2022/11)
2022年10月18日(火) ACSES/Cx公開ワークショップ(第6回)
2022年11月15日(火) ACSES/Cx公開ワークショップ(第7回)
◆編集者より
久しぶりに学会に対面参加しようと張り切っていたところ、子どもがコロナ陽性となり濃厚接触者として1週間の自宅待機。結局web参加となってしまいました、、皆様にお会いできず残念です。
最近、ガス、電気などのエネルギー費用の高騰もあり、様々なお客様から省エネの相談が舞い込んでくるようになりました。場合によっては、既存Cxと思い、積極的にお勧めしています。これを機に更にCxが世の中に広まればいいなと思う、今日この頃です。
◆編集長より
CxPE座談会の様子を9回にわたってお届けしてきましたが、人のしゃべる言葉を文章にする難しさを痛感しました。人のしゃべる言葉をそのまま文章にすると、意味がわからない文章になったり、前後の文章でつながりが無くなったりすることが多く、読んで意味の分かる文章にすることは相当なスキルが必要だと実感しました。
今年度もCxPE座談会を実施し、その様子をCxレターにてお届けする予定です。ご期待ください。
◆企画制作
編集者:天野(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
編集長:大石(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
WEB版作成:小澤(建築設備コミッショニング協会 事務局)
※本誌に掲載した著作物の著作権は、特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会が所有します。許可無く複写転用することをお断りいたします。
お問合せメール:bsca_mail@bsca.or.jp(アットマークを半角に)