コミッショニングレターVol.19 No.5(5月号)
2022/05/20掲載
第18期通常総会について
特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会の第18期通常総会と講演会および技術交流会を下記の通り開催致しますので、ご案内申し上げます。
日 時 2022年5月26日(木)13時30分 ~
場 所 TKP新橋カンファレンスセンター ホール15A(15階)
東京都千代田区内幸町1丁目3-1 幸ビルディング
https://www.kashikaigishitsu.net/facilitys/cc-shimbashi-uchisaiwaicho/access/
スケジュール
通常総会 13:30~14:30(予定)
講演会 15:00~16:45(予定)
講演1:大塚雅之氏(関東学院大学 建築・環境学部 教授)
講演2:矢田部隆志氏(東京電力ホールディングス㈱技術統括室プロデューサー)
技術交流会 17:00~19:00 同会場 ホール15C
WEB配信について
総会の進行状況をWEBで配信予定としますが、安定的なインターネットでのWEB交信の実施にはリスクがあるため、WEBによる議事の採決はいたしません。つまり、あくまで議事進行をWEB配信するだけに留まりますのでWEB配信に参加の正会員も委任状をお出しください。当日、WEBで交信が可能な会員からのご意見やご質問を受け付ける予定です。
なお、正会員の方で、総会を欠席される方、WEB配信を希望される方は、必ず委任状のご提出をお願い申し上げます。
詳細は下記のBSCAホームページをご確認下さい。
ACSES/Cx公開ワークショップ開催案内
コミッショニングに活用するという視点で開発してきた空調システムエネルギーシミュレーションツールACSES/Cx(Air-Conditioning System’s Energy Simulation for Commissioning)をオープンソースとして公開するワークショップを開催します。本ツールは京都大学および岡山理科大学の吉田研究室が中心となり20年以上に亘って開発されたもので、BSCAの先導的コミッショニング事業などでも活用されてきました。本ツールは次のような特徴を持っています。
1. コミッショニングに活用することに重点をおいて開発しているのでBEMSの計測データを取り込むインターフェーズを有し、実運転のデータとシミュレーション結果とを直接比較することができるような構造をもっている。
2. MATLAB/SIMULINKというGUI(Graphical User Interface)を有するプログラミング環境で開発されているため、空調システムの設計図を描くような感覚でシミュレーションモデルが作成できる。
3. 最近のBEMSでは1分サンプルでデータ取得して検証がなされるようになってきている。これと呼応して高い分解能(リゾリューション)で実システムの検証が行えるようにシミュレーションのサンプリング時間は1分である。
4. 本体のシミュレーションツールだけではなく、メーカーから提供される性能曲線に基づいてモデルを作成するための画面読み取りデジタイザー、種々の形式のBEMSデータを変換・結合するツール、シミュレーション結果を機能的にハンドリングする処理するツール、空気線図計算ツールなど、各種のサブ・アプリケーションを備えている。
5. 開発したモデルを最適化のための目的関数として利用して最適解を見いだす、CFDツールなど他のツールと結合して連成シミュレーション(Co-Simulation)を行う、など、作成したモデルの拡張利用ができるというオープン性がある。
■開催日時 2022年5~10月 毎月1回2時間程度
(第2回目以降の開催日時は仮日程であり参加登録者と調整中)
プログラム(予定<2回目以降は仮>)
第1回 5/17(火) 15:00~17:30 ACSES/Cxの概要(開催済)
第2回 6/ 8(水) 15:00~17:30 ACSES/Cxの機能と基礎
第3回 7/ 7(木) 15:00~17:30 熱源システムシミュレーションモデルの解説と事例
第4回 8/18(木) 15:00~17:30 2次側空調システムシミュレーションモデルの解説と事例
第5回 9/20(火) 15:00~17:30 建物全体空調システムシミュレーションの解説と結果処理事例
第6回 10/19(水) 15:00~17:30 空調システムの最適設計・運転などへの応用事例
第7回 11/15(火) 15:00~17:30 予備日
■ 開催形態
ZOOMによるオンライン講義
■ 講師
吉田 治典 (BSCA理事長)
■ 参加費
無料
■ 参加申込
若干名を追加募集致します。お申込み方法はホームページを参照ください。
■ 参加資格
BSCA会員(賛助会員を含む)
■ 参加に要する技術的資質・機材・アプリケーションプログラム
当協会のホームページにてご確認下さい
CxPE座談会報告 関西(その2) 第1回
建築設備コミッショニング協会(BSCA)では、「Cxの普及並びにCxPEの活躍方法に関する意見交換会」としてCxPE座談会を東京(1回)、関西(2回)にて実施いたしました。Cxレターでは全3回のCxPE座談会で議論された内容を下記の通り9回にわけてお伝えします。
今月号からはCxPE座談会(関西その2)の内容を3回に分けてお伝えします。
Cxレター2022年2月号 CxPE座談会 関西その1 1回目
Cxレター2022年3月号 CxPE座談会 関西その1 2回目
Cxレター2022年4月号 CxPE座談会 関西その1 3回目
Cxレター2022年5月号 CxPE座談会 関西その2 1回目
Cxレター2022年6月号 CxPE座談会 関西その2 2回目
Cxレター2022年7月号 CxPE座談会 関西その2 3回目
Cxレター2022年8月号 CxPE座談会 東京1回目
Cxレター2022年9月号 CxPE座談会 東京2回目
Cxレター2022年10月号 CxPE座談会 東京3回目
―CxPE座談会(関西その2) 参加者―
大石晶彦(㈱大林組)、木虎久隆(関西電力㈱)、高橋直樹(㈱日建設計総合研究所)、西山満(日建設計コンストラクション・マネジメント㈱)、一坪剛史(㈱きんでん)、前田龍紀(㈱竹中工務店)、松下直幹(㈱コミッショニング企画)、山口弘雅(関西電力㈱)、吉田治典(BSCA理事長)、柳原隆司(BSCA副理事長)、オブザーバー参加・髙浦敬之(元 京都駅ビル開発㈱)
■出席者自己紹介
[高橋]省エネルギーコンサル業務を行うことが多い。長崎県庁の新築Cxで機能性能試験に携わった。
[一坪]空調設備工事を専門にしており、日常業務では、エネルギー分析などを行っている。Cx自体の経験はないが、それに近い形での熱源更新業務などの経験がある。
[前田]主に学校、病院、ホテル等の設備設計を担当している。修士論文でCxを題材に研究を行っていたこともあり入社して15年以上経った昨年CxPEの資格を取得した。現在、インハウスCxを柳原氏、松下氏と共に進めている。
[山口]主に自社物件の性能検証、設計を中心に業務を行っている。実際にCx業務に携わった経験はまだないが、性能検証業務での経験から発言をしたいと思っている。
[高浦]京都駅ビルCxプロジェクトの立ち上げから、熱源改修で省エネ大賞、ASHRAE Technology Award最優秀賞をもらったところまで担当した。当初はCOP(Coefficient of Performance)を京都議定書のCOP(Conference of the Parties)と間違えるほどで、技術的な事が判っていたわけではなかったが、以前JR西日本の駅ビルで小規模な省エネ改修を行った経験があったので、京都駅ビルでも何か出来るのではないかと取り掛かった。発注者が頑張らないと意識、技術を持った人が集まらない。数少ないCxを最初から最後まで経験できたことをもとに発信していきたい。
[木虎]自社ビルの建設、性能検証をしてきており、10年前から技術部門の営業を担当している。現在、当協会で進行中のCxプロジェクトにも参加しており、改めてCx普及を進めていければと思っている。
[松下]2014年から京都駅ビルプロジェクトに携わり、本格的にCxに参加した。現在は起業し、Cxプロジェクトを主たる業務として行っている。試行錯誤的にいくつかのCxプロジェクトを主導してみて、Cxには関係者すべてにメリットをもたらす潜在能力があることを実感している。この点について本日の座談会で共有できればと思っている。
[西山] BSCAの先導的Cxに関わっている。過去に各種の建物を設計してきたが、設計後の建物の性能、エネルギーについて自分で確認することが出来ず次々と仕事をしてきた。もう一度立ち返ってその部分を確認したいという気持ちでCxに携わってきた。
[柳原]東京電力在籍時代の話だが、当時、夏場の電力ピークが大きく、各電力会社がこぞって発電所を建設していた。需要サイドで抑えないと供給サイドでは解決できないと考え、蓄熱式空調システムをお客様に提案し、採用してもらったことがあった。また、研究所に移った際に、実測装置を多額の費用をかけて作ってもらったが、きちっとした数値が得られないことがあった。センサの選定やパルスの処理等問題があり、その後センサの研究をした。どうして設計通りの性能が出せないのか、動かないのかという事を研究していたのでプロセスが重要だということがよく理解できる。どのようなシステムでも設計でどう動かそうと思っているのかを掴み、実測、データで検証しなければ、何となくで終わってしまうという実態を多くの人にわかってもらいたいと思う。
■CxPE座談会 関西その2 1回目
[吉田]現在100名弱のCxPE資格者がいるが、Cxプロジェクトがあまり立ち上がるわけでもなく、CxPEとしての知識、経験を活かせる機会が少ない。どうすればCxPEの資質が活かせるようなプロジェクトが作れるか、あるいは既存のプロジェクトに関わってもらって資質を活かすことができないものかということをBSCA企画・運営委員会で議論してきた。なかなか前に進まない状況の中ではあるが、本日はこの課題にどう対処すれば良いか等、忌憚なく話が出来れば良いと思う。
本日、京都駅ビルプロジェクトの発注者側の高浦氏をオブザーバー参加でゲストにお迎えしており、発注者側からの観点から意見をもらいたいと考えている。
[吉田]発注者はCxを実施することが良いことだと判ってはいるが、稟議書を書いて組織内で説得しなければならない。OIST(沖縄科学技術大学院大学)のCx事例では、Cxで省エネをしたいのでBSCAにアドバイスをもらいたいという依頼があり、発注者側が意欲を持って内部を説得しCxを立ち上げたため軌道に乗った。ESCO等は行政が色々取り組んでいて仕組みそのものが出来ており、ハードルは高いがチャレンジできるものになっていると思う。議論の始まりとして、Cx業務委託書の雛形を作成すれば発注者が稟議書を作成する手間が軽減され、Cxに取り組む事例が増えるのではないかという提案もあるがどうだろうか。
[高橋]発注者の立場ではないので、想像でしかないが、ESCOの場合は成功事例も多くあり、その情報があるのでやってみようかという動きになるのではないかと思う。ESCOの場合、ESCO事業でサービスを開始すればESCO事業者は発注者と一緒にやっていく形になる。Cxと同じ流れになると思うが、一番の違いは結果を保証するという部分だと思う。Cxを活用したビジネスでは、どこを目標とし、落としどころとするかという点が発注者にアピールするポイントになるのではないだろうか。何か見えやすいような結果があると説明がしやすいのではないかと思う。以前にCx実施が補助金交付の条件になった時にいくつか問い合わせがあった。例えば、Cxを実施すれば採択のための点数が増える、Cx実施が必須という補助金等とセットにできれば裾野が広がるのではないかと思う。
[吉田]大阪ESCO協会の会長をしていたときに、ある市庁舎でESCOをやろうと思うが何から始めてよいか担当者が判らないというので、教えに行こうというプロモートを行った。CxPE座談会関西その1で話題になったCM(Construction Management)業務委託契約約款・業務委託書(注1)は、それなりに利用されていると思うが、これのCx版を作ってはどうか。
[高橋]CM業務は発注者側に入りこむことになるため、仕様書を書きやすいのではないかと思う。Cxの場合、第三者的な立場が重要なため、CMほどきっちり書く必要があるのかどうか、色々ご意見があるのではないかと思う。
[山口]社内の建築部門でCM自体をビジネスとして外販するという動きがある。CMとCxの対象を比較すると、CMのほうが対象範囲は広い。建築設備のCx対象範囲は小さいものの、プロセス自体はしっかりしている点など共通部分も多いのではないかと思う。CMの外販業務自体には携わってはいないが、CM業務の派生としてCx業務を提供することもありうると思う。
[山口] 新築建物の場合、Cxでは、施主の作りたいものを具体的な要件に落とし込み、その要件通りに作り上げ、その後の運用もきちんとしていくことになるが、色々な要件を具体的にしておかなければ施主にメリットを見せにくい。裾野を広げる意味で、既存建物に関して発注者ニーズに応じ、対象範囲を限定した部分的なCxを提供していくという方法も有効だと思う。
[木虎]Cx事業の仕様書に記述すべき内容をある程度は理解しているつもりでいたが、実際に仕様書を作成してみると、前例を見ないと具体的に記述すべき内容が判らなかった。前例を見ながら仕様書を作成していくと、どのような業務を実施しなければならないか明確になるので、BSCAで雛形を作ることが必要ではないかと感じている。
注1:(一社)日本コンストラクション・マネジメント協会 CM業務委託契約約款・業務委託書
■CxPE座談会 関西その2 1回目
CxPE座談会関西その2では、Cx業務委託書雛形の必要性に関して議論を行いました。来月号では発注者側からの意見を中心に座談会の様子をお届けします。
活動実績 活動予定 他
◆協会活動実績 (2022/4~2022/5)
2022年4月12日(火) 2022年度第1回 企画運営委員会
2022年5月17日(火) ACSES/Cx公開ワークショップ(第1回)
◆協会活動予定 (2022/5~2022/6)
2022年5月26日(木) 第18期通常総会、講演会および技術交流会
◆編集者より
依然として新型コロナの感染者数は高止まりの状況ですが、ある程度withコロナが定着してきていることから、経済活動も少しずつ活性化してきていると感じています。ということで、受注した案件で計測の準備を始めたところ、購入したくてもセンサがない、ケーブルがない、機器がない・・・。ウクライナ侵攻も重なり、半導体や材料不足が深刻であるということを改めて痛感している今日この頃です。
◆編集長より
今年のGWは久しぶりに田舎に帰省しました。前回帰省したのはコロナ禍が拡大する前の2020年のお正月でしたので2年半ぶりの帰省でした。高速道路は大渋滞、道の駅の駐車場も満車と以前のGWが戻ってきたようです。まだまだ、COVID19が絶滅することは無さそうですが、すこしずつ日常がもどりつつあることを実感しました。
◆企画制作
編集者:天野(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
編集長:大石(建築設備コミッショニング協会 企画運営委員)
WEB版作成:小澤(建築設備コミッショニング協会 事務局)
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