コミッショニングレターVol.18 No.8(8月号)
2021/08/11掲載
- 令和3年度 デマンドサイドマネジメント表彰について
- 東急電鉄㈱ 田園都市線5駅リニューアルプロジェクト
- Cx技術開発に関する懇談会 開催報告
- 2021年度 CxPE研修会、CxTE講習会
- 活動実績 活動予定 他
令和3年度 デマンドサイドマネジメント表彰について
CxPE 天野雄一朗(四国電力)
CxPE 安岡稔弘(四電技術コンサルタント)
四国電力香川支店および四国電力送配電高松支社の建物である高松電気ビルで実施した「コミッショニング技術を利用した複合化蓄熱空調システムの運用適正化の取組み」が令和3年度デマンドサイドマネジメント表彰の一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター振興賞(受賞者:四電技術コンサルタント)を受賞しました。これは、空冷ヒートポンプ氷蓄熱ユニットと水冷ヒートポンプチラーを主とした熱源に、試行的に採用した帯水層蓄熱システムを加えた複合化蓄熱空調システムに対し、四国電力と四電技術コンサルタントが計画段階から運用段階に亘り継続的に実施したコミッショニングプロセスが評価されたものです。
具体的な成果としては、複合化蓄熱空調システムの採用により夏期代表日で約30%、年間で約35%の夜間移行率を達成し電力負荷平準化が図られていることや、継続的なコミッショニングによりBEST誘導基準認定ツールによる一次エネルギー消費量の基準値に比べ22.1%削減した778(MJ/㎡・年)を達成しています。
なお、四国電力では、2050年カーボンニュートラル化に向けて、ストック建物と呼ばれる既存建物の省エネ化が最重要であるという考えから、昨年度より、これまで社有建物で培った省エネ技術をもとに一般建物を対象としたコミッショニング事業を展開しています。
これらの事例についてはヒートポンプ蓄熱センターのホームページ
(https://www.hptcj.or.jp/library/tabid/1829/Default.aspx および
https://www.hptcj.or.jp/Portals/0/data0/hp_ts/sample_cool/pdf/Vol55/general/vol55_p71.pdf)
をご覧ください。
東急電鉄㈱ 田園都市線5駅リニューアルプロジェクト
「Green UNDER GROUND」
第1弾 駒沢大学駅リニューアル工事の紹介
当協会が先導的Cx事業として受託している、東急電鉄㈱田園都市線駒沢大学駅の空調設備改修工事と統括監視システム構築に関するプレスリリースがなされました。本プロジェクトは2018年にスタートし、調査フェーズでは現有設備の実測・実態調査をおこなって課題抽出を行い、基本設計フェーズ、実施設計フェーズを経て、本年秋から施工フェーズに入ります。本プロジェクトの特徴は、省エネルギー・省CO2だけではなく、運用データを活用したCBM(Condition Based Maintenance)の推進により、設備の信頼性向上と運用の効率化を図ることにあり、これをOPRの柱にしています。当協会の会員で構成するコミッショニング管理チーム(CMT)は6名体制で取り組み、いままでに蓄積してきた知見を提供してコミッショニングを進めると共に、協会が発行している建築設備コミッショニングマニュアルの付属文書を充実するために種々の具体的文書類を整備して、現在進行中のマニュアル改訂作業に反映することにも寄与したいと考えています。以下は、プレスリリースのダイジェストですが、コミッショニングを評価して発信して頂いています。会員の方々には、是非、これが広くリンクされていることも含めてご確認ください。
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東急電鉄は、『「サステナブルな地下駅」を目指す田園都市線5駅リニューアルプロジェクト「Green UNDER GROUND」』を開始しました。プロジェクト名に含まれる「Green」は、田園都市線の路線カラーでもあり、「快適・安心」、「スムーズ」、「クリーン・サステナブル」、「親しみが生まれる」、「新しさがある」など、さまざまな想いが込められています。開業後40年以上が経過した田園都市線の地下区間5駅を、訪れた人が心地良く、ワクワクする体験ができる空間に生まれ変わらせることを目指します。その第1弾として、駒沢大学駅リニューアル工事が7月30日(金)に着工しました。
駒沢大学駅のリニューアル工事では、建築設備コミッショニング協会が先導的Cxを行っています。東急電鉄としては初めてコミッショニングを導入し、東急電鉄が目指す快適空間の創出やCO2排出量削減等の建築設備性能が確実に発揮されるように駅空調設備の改修を行います。また、CBMの推進による効率的な運用を行います。さらに、駒沢大学駅のステーションカラーでもある緑色の壁面タイルや、床材などの既存材を最大限活かした計画とし、廃棄物削減に取り組みます。これらの脱炭素・循環型社会の実現に向けた施策により、改修後のCO2排出量を年間約260t-CO2削減する予定です。
下記のリンクより詳細情報がご覧いただけます。
東急電鉄からの発信
・ 東急電鉄株式会社 ニュースリリース
https://www.tokyu.co.jp/company/news/list/Pid=post_347.html
・ 東急電鉄株式会社 いい街いい電車プロジェクト 「Green UNDER GROUND」
https://ii.tokyu.co.jp/safety/gug_komazawa-daigaku
他のニュースサイトによる発信
https://railf.jp/news/2021/08/01/203000.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000600.000010686.html
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000600.000010686&g=prt
Cx技術開発に関する懇談会 開催報告
建築設備コミッショニング協会では「人材・事業育成」、「先導的Cx受託業務、研究支援」、「情報
交流」を柱として活動を行っています。これらの活動を推進するには各種Cx技術の開発及び普及が必要と考えています。2021年7月15日(木)に協会メンバーにより「CX技術開発」に関する懇談会(注1)を開催しました。本記事では懇談会の様子をお伝えします。
注1) ZOOMによるオンライン会議
懇談会出席者(建築設備コミッショニング協会所属)
理事長:吉田 治典
副理事長:柳原 隆司、赤司 泰義
理事:上谷 勝洋、小林 陽一、田井 公浩、田上 賢一、西山 満、松下 直幹、大石 晶彦
監事:⾼瀬 知章
企画運営委員:木虎 久隆
―Cxに関する技術懇談会―
・BMSデータ処理に特化してはどうか。シミュレーション技術も検討の対象とし、空衛学会等と異なる方向性を目指すべきではないか。(吉田)
・Cxツールとして役立つものを開発し、BSCAとして公開することも考えられる。(吉田)
・空衛学会等で開発したツールをBSCAで公開することも選択肢の一つとすべきではないか。BSCAで新規にツールを開発するのはかなり困難ではないか。ビジネスとしてCx業務に役立つツールを公開することが大前提と思う。なお、ツールを公開した場合、メンテナンスを続けることが重要である。(赤司)
・2年ほど前に米国を訪問した際にWEBを利用したCxプロセス管理ツールがあった。書類整理や写真整理なども行えるツールだった。(吉田)
・国内のCx業務でも類似のツールを既に使用している。ドキュメント管理等のツールとして今後使ってみたいと考えている。Cx業務ではドキュメント管理に労力が非常にかかる。このようなプロセス管理ツールはCx業務を行う上では必須ではないか。(松下)
・現場写真をCxプロセス管理ツール内に管理し、遠隔でCx業務を行うことも現実的に可能ではないか。(吉田)。
・ある設計事務所では工事監理システムの一部として、現場写真をWEBにアップしてもらい監理するシステムを実施している模様。(松下)
・技術の方向性が工学的でないため、若い研究者に開発を行ってもらうのは困難だと思う。民間企業ならどうだろうか。(吉田)
・確かに、技術開発には組織が必要と思う。日本の民間企業はどちらかと言えば護送船団方式であるため、なかなか新規に開発を行う企業は出て来ないと思う。Cxファーム登録企業であれば可能性があるのではないか。(柳原)
・企業として開発を行うとBSCAとの関係が微妙となる。ボランティアにならざるを得ないではないか。しかしながら、民間企業としてボランティアはありえないと思う。(松下)
・Cxの技術業務は実測とデータ分析とシミュレーションに分けられる。ベンチャー企業が参入しやすいのではないか。(柳原)
・Cxがビジネスになることがわかればベンチャーが出てくる可能性は十分あると思う。(松下)
・米国ではベンチャー企業が参入してくるが、日本にはその風土が無い。(柳原)
・技術開発には大きな労力がかかるため、空衛学会等で開発したツールをBSCAで展開する方法もあると思う。Cx技術者に使ってもらわないと意味がない。(赤司)
・実際にエネルギーサービスなどを行っている方はどのような意見をお持ちか。(柳原)
・エネルギーマネージメントサービスを10年程度前からやっている。実際の現場を調べてみると空調制御が上手く機能していないことがある。これらの現場で細かいチューニングを行うことは非常に手間がかかる。チューニングを自動的にできないものか。(田井)
・チューニングの最適化のためにはLCEM等のシミュレーションツールを竣工時に納入するようなことを検討すべきと思う。(柳原)
・Cx業務担当者の年代によってほしいツールは異なると思う。(赤司)
・データが来れば勝手にグラフを書いてくれるようなツールがあれば良い。CX業務においてはデータを可視化し、見せることが非常に重要である。(柳原)
・建物オーナー等データを見せて説明することが非常に大切と考える。(松下)
・ある設備工事会社は独自にグラフ作成ツールを開発している。使用勝手は非常に良かった。(高瀬)
―今後の方針―
BSCA企画運営委員に対して「Cx業務に必要と思われるツール」の意見を募集し、ニーズを把握したのち、今後の方針を決定する。
以上
2021年度 CxPE研修会、CxTE講習会
2021年度のCxPE研修会並びにCxTE講習会を下記の通り開催予定です。詳細が決まり次第、協会HPに掲載します。今しばらくお待ちください。
■CxPE研修会
開催日:2021年12月(予定)
開催場所:東京
第10回となる講習会を、昨年度に引き続きコロナ禍の状況を考慮して、「Zoom」によるオンラインで開催致します。機能性能試験や設備運転適性化などの検証業務を実行するCx専門技術者として、スキルと資質を修得できる講習会です。設備設計施工に携わる技術者、運転管理の技術者、エネマネ事業に携わる方、建築設備の勉強をされている学生の方等、全国各地からのご参加をお待ちしております。
□講習日時 : 2021年10月22日(金)
□開催時間 : 9:00~16:30 ZOOMを利用したオンライン講習会
□参加定員 : 60名 (ZOOM最大100名)
□参加費用
個人正会員:A・B両方受講の場合 10,000円,AのみBのみ片方受講の場合5,000円
※賛助会員企業からは2名まで受講費無料、3名目から上記受講料となります。
一般 :A・B両方受講の場合 20,000円,AのみBのみ片方受講の場合15,000円
※学生の方 A・B両方でも片方でも5,000円
□講習会プログラム
講習1(CxTE-A講習)
1)計測技術
2)性能検証事例(水系性能検証)
3)性能検証事例(空気系性能検証)
講習2(Cx過程全体講習)
1-1)TE-A,Bの定義
1-2)Cx業務過程全般について
講習3(CxTE-B講習)
1)TE-B業務フロー概要
2)データ整理・可視化分析
3)シミュレーション技術
* TE-Aは講習1・2、TE-Bは講習2・3の受講が必要です。TE-AとTE-Bの両方を受講することもできます。
* 「建築 CPD 制度認定対象プログラム」「空気調和・衛生工学会CPDシステム」の 対象プログラム
です。各CPD登録者は、受講会場の受付で、CPDの申告をしてください。
活動実績 活動予定 他
◆協会活動実績 (2021/7)
Cx技術開発懇談会 7月15日(木)WEB開催
2021年度 第2回 企画・運営委員会 7月26日(月)WEB会議
◆協会活動予定 (2021/8~2021/9)
◆編集長より
7月15日にCx技術開発に関する懇談会をWEBで実施しました。参加者から色々な意見がでてきましたが、改めて「開発」することの難しさを認識させられました。
Cx技術開発ではないのですが、WEBを利用し自動的に測定データをクラウドに保存する「おんどとり」が欲しいなと思っていたら、理想の製品がありました。(BSCA会員の方より情報提供がありました)
興味がある方は下記のHPをご覧ください。
https://www.tandd.co.jp/product/ondotori/tr7wbnw-series/
技術は日進月歩ですね。
◆企画制作
編集長:大石(BSCA企画運営委員)
WEB版作成:小澤(BSCA事務局)
※本誌に掲載した著作物の著作権は、特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会が所有します。許可無く複写転用することをお断りいたします。
お問合せメール:bsca_mail@bsca.or.jp(アットマークを半角に)